#2 Zone Theory④ ~レーンの応用、ゾーンOの型と45度の動き~
こんにちは、ダーウィンのきよです。
ブログを書いていると、昔卒論を執筆した時のことを思い出します。文字数は4万字程度でしたが、このブログで普通に超えていく文章量だなと笑、昔の自分に対してもっと何か言ってやりたくなります。卒論を進めている4年生、頑張って!
ちなみに宣伝ですが、ダーウィンは6/29(月)にナイトアルテを開催します!フルで2コート取れます、人工芝です。なんて贅沢なんだろう笑
以下参加申請フォームに飛びます。
Darwin Ultimate Night 6/29(Mon)
ぜひみんなで楽しくアルティメットをしましょう!
目次
今回のテーマはゾーンオフェンスです。
ゾーンオフェンスについてはアルティメットを語るときに一番抽象的になりやすい部分だと感じます。「ハンドやミドルの運動量」とか「速い展開」とか、感覚的に言葉での説明になりやすいトピックと言えます。チームでの共通認識として持っている場合には何も問題ありません。ですが、慣れの部分ももちろんあるため、説明にやきもきする時もあるのではないでしょうか。
個人的なゾーンOの基本的思考
~サッカーのゾーンに似ている?~
サッカーの試合を見ていると、自陣後方のディフェンスラインでボールを回していきながら、時にはミドルポジション(ボランチなど)に回して機をうかがう場面が見られます。これは相手のゾーンの穴を作るためのものです。意図的にやっているチームほどその根底にあるコンセプトが素晴らしいです。最終的に穴を作ってパスを通していき、得点につなげる。本来はゾーンOこそ理詰めなので、チームで共有する時に統一の意志を持っていると良いですね。また、我慢と言われるゾーンOですが、「10往復展開してその中で1本合間を通すスローができれば◎」というくらいの気持ちでやることも必要です。Be patient! です。
ゾーンOのポジション解説
ゾーンオフェンスのポジションに関しては、ディフェンスほど難しくない共通言語があるのではないかと思います。
①ハンドラー
誰もが知っているポジションですが、ハンドラーの求められる仕事はかなり多いです。ざっとハンドラーとして考えられる基本原則は次の5つです。
1.展開スピードは基本的に速くする
展開は速く回すことが重要です。これはミドルの動きと連動して、カップが平行に近い形になった際に、速い展開で45度のラインを生み出すためです。もちろん緩急は必要ですが、基本的に人はディスクより速く動けないので、速い展開の方が良いと思います。
2.カップの中に入ってパスをもらう(カップを狭める)
カップの中に入ると、それを止めるためにディフェンスは少し前のめりになります。これも45度のラインを作る動きや、ディフェンスの頭を越すスクーバーなどを使うために行う動きです。カップゾーンに対する攻め方の例として取り上げます。
このような動きは後述のパパーも行ってくれるとハンドとしては助かります。
3.マイナスゲインの方向に位置をとる(カップを広げる)
これはカップの平行を作ることとは逆の動きで、カップの合間を広げる役割があります。後ほど型として解説する際に記載します。
例えばこうすると、①への展開が簡単にできてアンハメに行けます。そして落差が生まれるので、先ほどと同様に初期の形よりカップは広がりやすいです。
カップ自体がそれ全体で動いていく点から、基本的には2~3本のレーンをまとめて横断していく動きになります(また、守れる範囲が狭いです)。しかも、あまりプレスが上手くないと、簡単にハンドラーで展開できてしまい対応力が低いです(ハンドへのプレスにはならないです)。落差さえつけてしまえば攻略のしやすいゾーンと言えます。次の図で表すと分かりやすいですが、実際にはパスコースを防ぐ役割をするのがカップであり、素早い展開に弱い側面があります(ハンドを止められないことが多いです)。
残りの3人で他のスペースを補っていくには難しさがありますよね。本来捨て所を作って7対6を作れると守りやすいゾーンですが、うまく機能しなくなります(実際はチームの決め事でうまくやっているチームもありますが、ご容赦ください)。
こういう背景もあって、技術力が向上した近年は、カップではなくハンドへのプレッシャーをかけるゾーンを作るチームが多くなってきた気がします。カップ形成よりも、個々がゾーンを守りながらプレスをかけるタイプですね。
4.ハメ側では持ちすぎない
これは鉄則だと思います。マンツーマンでもゾーンでも、ハメ側では「一本出なかったらすぐに展開」がお決まりではないでしょうか。チーム方針としてある場合には、必ず守らせなければオフェンスが成立しません。
5.レシーバーが次に投げやすいスローを投げる
自分が進む方向とは逆にディスクが飛んで来たら、攻める方向と逆に体を向けてしまうことになります。次の動作をする際に、味方に背を向けることとも同義です。これを避けるために、スローに自信のある人は味方が次に投げる動作に入りやすいスローを投げる必要があります。
以上の5つになります。ハンドラーで一般的に避けてほしいこととして「同じポジションにとどまって待っている状態」です。常に動きを持っておくと、この後に紹介する型を体現しやすくなります。
②パパー
(後述のウィングと合わせてミドルと総称されることもあります)
ハンドラーが全体的に横の動きを多く持つと考えると、パパーは前後へディスクの動きを付ける役目があります。ゾーンの中央に位置しやすいパパーの大きな役目としては、「ゾーンそのものを前後移動(前後に広げ)させる」ことだと考えられます。これはゾーンの「平行」を作る動きなど、穴を生むための動作になります。
例えば、ゾーンの真ん中に位置するポジションを前に行かせることで、後方にスペースを作ります。
ほかにもゾーンを広げる役目も担うことができます。
もちろん他の人の動きも連動させるのですが、一人ひとりの役割を切り取ると、パパーはこの動きが基本です。
③ウィング
(パパーと合わせてミドルと総称されることもあります)
このポジションの大きな動きは2点です。「ゾーンD全体を広げる役目」と「斜めへの動き(ダイアゴナルラン)」です。私は「自演乙」ポジションと心の中で言っています。結構好きなポジションです。
★ゾーン全体を広げてからの斜めの動き
実際にオフェンスの動きについて解説していきます。大体5秒くらいの間の動きなので、所々OF・DFともに動いていないポジションがありますが、許してください。
本来は赤③が斜めのパスを止めるべきですが、速い展開に対応できなかった時です。
3つのポジションがそれぞれの役割を考えて動き、双方の意図を把握していければ、点を取れるようになってきます。チームとしていくつかオフェンスのパターンを持っておくと、意志を持って攻めることができます。
ゾーンOの型
これについては、ディフェンスの逆を想像することで考えることができます。ゾーンOの基本の型は「△トライアングル」です。皆さんはよく「二択を作る」という言葉を聞いたことはありませんか?あれを体現しているものが△の形になります。実際に図で説明します。
△の形は、ディフェンスの守るコースを2択にして一方を守りにくくする型です。すべての基本はここから始まります。△のパターンがいくつかありますので、できる限り紹介していきます。
ハンドラーが作る△
ハメ側に行った際に作る△です。これを防ぐために、プレスのかけ方を変えるゾーンもあります。次の図のようなものです。
ハンドやミドルで作る△
先ほどのミドルの流れの図を使っています。ここに至ると、2つの△が見えます。△を作る理由は、ディフェンスの型の合間にはめ込みやすいことが考えられます。先ほどの流れから見ていくと、④にパスが出た後はこの形に移行します。
ディスクを持つ人にとって、そこに選択肢が多ければ多いほどその次の攻撃への選択肢も増えます。「オフ・ザ・ディスク」の動きについては奥が深いですが、一つは△を作るための動きを考えていくと、その瞬間自分はパスをもらう人ではないというパターンも感じることができるでしょう。
*注意点*
ゾーンOで△を作り、2本、3本とパスが続いていったとします。注意点としては「調子に乗らない」ことです。気持ちよく回していてTOが起きることはよくあります。これは点を取ることに目が行き過ぎてミスにつながる場面です。何度もショートパスが通るようになると、それでつないでいこうとしますが、ディスクが進むほどもらえる味方も少なくなるので、パスコースが単調になり、ディフェンスに狩られたり、味方が要求するコースに投げられない「点でのつなぎ」になってしまいますので、気を付けましょう(一度は経験してみてください笑)。
レーンにあてはめた考え方
今回話をしてきたオフェンスについてですが、レーンの考え方について言及していきます。アルティメットを長年やっていれば、もしくはサッカーなどの考え方の近いスポーツ経験者であれば、無意識にやっていることかもしれませんが、敢えて意識してやってみることで、プレーの幅が広がるかもしれません。
①アルティメットで典型的に次につなげにくい動きとは?
端的に言えば、ミートやヘッズ(英語ではunderと言われます)の動きです。なぜかというと、パスをもらった際に一度攻める方向に背を向けているからです。また、惰性で方向転換をするとトラベルになるので、この要素も次の攻撃へつなげづらい仕様になっています。
これをレーンにあてはめ、ミートをもらった際に向けるエリアを考えてみます。例えばサイドレーンについては典型的で、攻撃のために向ける方向が限られます。
黄色矢印は動きながら思考できる方向、赤色矢印はレーンで本来見ることのできる方向を足しています。仮にスローが向かって右側に出たら、レシーバーはコート外を見ることになりますよね。そうすれば赤色矢印はもっと増えて、せっかくの攻撃に向くための方向が無くなっていきます。
②攻撃の選択肢を広げる考え方
では、どのようにしたら攻撃の選択肢を多く保てるか。次の2点があげられます。
1.センターレーンもしくはハーフレーンにいること
2.攻める方向に対して、斜めに体が向いた状態でいること
では、この向きを作るための動き方とは何でしょうか。それは、45度の動きです。サイドレーンにいても、斜めにもらいに来ることで次の攻撃への選択肢を増やすことができます。このレーンを横断する動きをカットバックと考えます。
まず右側のプレーヤーですが、ハーフレーンにいることで左右のどちらもに選択肢を持つことができます。左側のプレーヤーは、斜め方向に走っている想定ですが、攻める方向にも選択肢が生まれるのが分かるでしょうか。ディスクをもらうときの体の向きはかなり重要です。ちなみに、この体の向きを一番理想的に体現できる動きが、ハンドラーの駆け上がり(追い越し、英語ではupline)に他なりません。ハンドラーは前を向くことが多いので、攻撃の起点になりやすいポジションですよね。
③45度コースへの動き(ダイアゴナルラン)について
45度という言葉は、基礎練習にもあるような基本の動きになります。この45度の考え方を0°≦θ<360°の中で考えると、自分のいる軸を原点にした座標平面上に、各象限へ45度が生まれます。先ほどの画像からわかるように、この45度線への動きが、レーンを横断する動きになりますので、相手のディフェンスを崩すきっかけになりやすいです。
先ほどの理想の身体の向きに関して挙げた2点を考えながら、具体的な状況を考えていきましょう。ウィングの動きで出したものと同じ図を使います。
アルティメットは7対7のスポーツなので、1人が作らなければならないスペースは多いです。ですので、本来サッカーに使われている5レーンの理論とは少し変える必要があります。今回はラインの使い方について話をします。
このシチュエーションとして、⑤は赤④を釣るために動いているので△に参加できません。④を黄色矢印の方向に走ってきています(45度)。④がレーンを超えて走ってきていることが分かります。ここで作れた△を使い、赤⑥が守れないように攻撃の型を作っています。一時的にO:D=4:3が作られています。斜めの動きは、本来1人が守るレーンに、オフェンスが入ってくることで、2人見なければならない状況を作る動きです。
次の動きについてです。①は45度、⑥は315度への動きを行い、④との△を作る動きをした結果、理想的な二択が生まれます。
ここの△で気を付けなければならないところとしては、⑥は黄色矢印の方向にもらってはいけないところです。理由としては、この状況でできた青①④⑥vs赤⑥⑦の3:2の状況が、真横に走ることによって△が解消されてしまい。有利ではあるものの、④⑥⑦vs赤⑤⑥⑦の3:3になってしまいます。すぐ近くの味方が同じレーン上に入ると、△ができなくなってしまうので注意が必要です。
ゾーンのオフェンスで斜めの動きをしてもらいに来る人が多いのは、これが理由です。まず、サイドレーンに位置取っていると、動ける方向が限られるので攻撃の選択肢が狭まります。また、まっすぐミートをしても攻撃方向に背を向けることになります。そして、ゾーンで真横に走る動きは、限定的には効果的かもしれないですが、先を考えるとそこでプレーが止まってしまう可能性もあります。これがすべて斜めの動きで解消できるので、タイミングを見て走ることで効果は絶大です。
~おわりに~
今回紹介したオフェンスの考え方は、まず1人で試してみると良いです。ディスクの動きは大体直線的なので、必然的に2名のプレーヤーの線は生まれてきます。そのため、その線に自分が頂点となり△を作ることで、攻撃の幅が広がります。
私自身、2択を作る(△を作る)動きを、どのポジションにいても行うように心がけています。もう無意識ではありますが、慣れるまではだいぶ意識して△を作っていました。皆さんも取り組んでみていただけると、ゾーンだけでなく、マンツーマンOの楽しさが増えると思います。
次回予告
Zone Theory⑤ ~すべての動きに直結する首振りとコーチング~
次回でこのゾーン理論は一旦ラストです。書きたいことはたくさんありますが、なかなか言語化が難しいですね。イラスト系を作ることが一番苦しいです笑
皆さん熱中症にはお気を付けください。
ありがとうございました。
Darwin #2