(#2) Zone Theory② ~プレスとは何に圧をかけているのか~

 こんにちは、ダーウィンのきよです。

 そろそろ緊急事態宣言が解除されますね。これからが本番かなと感じます。少しずつ練習を始めていくチームも増えてくるかもしれませんが、各所連携をとりつつ、感染拡大防止に向けて動いていけると良いですね。

 

 前回の記事で、ゾーンDがどういうコンセプトで、どのような場面で使うかの例を紹介しました。今回は、そのさらに具体的な話に突っ込んでいきます。

 正直なところ、今回紹介する考え方はオフェンスの方がアイデアの浮かびやすい内容になります。なんとなくふむふむと思って読んでいただけると嬉しいです。

  私は絵やデザインの才能がありません。ゲームの絵心教室ではリンゴに影をつけてギブアップです。画像のクオリティについてはご容赦ください。

 

 

レーンの概念

 レーンとは、ポジションとしてのレーン(レーンカッター)ではなく、フィールドを分割した際に生まれる縦の線を指します。

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 図のように、サイドレーン・センターレーン・ハーフレーンとして分けることにより、どこを守るのか、守りやすくするのかを明確にします。

 アルティメットにおいて、マンツーマン、ゾーンにかかわらず、真ん中に集めようという動きを多くとるのではないでしょうか。これは「真ん中にあれば両サイドに展開してディスクを動かすことができる」からです。ハマっているときも、真ん中やアンハメに持っていこうとしますよね。これは使えるレーンを増やすしたり、レーンを使用することで攻撃を広げる行為、「展開」にほかなりません。

 私の持論ですが、45度と言われる動きはまさしくレーンを分断して相手の守るエリアをかく乱する動きだと思います。レーンをぶった切る「レーンカッター」という解釈もありかなと思っています。

 ちなみにカットcutという言葉は「切れ目」という意味もありますよね。カットバックという言葉を聞いて初めはしっくりこなかったのですが、このレーンカッターという言葉を知ってから何となく腑に落ちた記憶があります。話を戻します。

 ゾーンディフェンスにおいて、はじめオフェンスが「アンハメ」や真ん中でディスクを保持しているときは、真ん中のエリアに人を集中させてハメ側(strong side)に投げさせるようプレスをかけます。そしてレーンをハメ側寄りに持っていき相手の使えるレーンを減らしていきます。つまり、使えるレーンが5→4→3→2→1と少なくなればなるほど、オフェンスはプレッシャーを感じます。

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 ゾーンを構築する時も、そしてゾーンオフェンスをするときも、このレーンを基本に考えておけば様々なことを思考することができます。所々でこのレーンについては話に出していきます。

 

ゾーンの基本は「型」である

 

 皆さんはゾーンを誰かに教えるときに、どのように説明しますか?目的から教えていくことも大事なのですが、それでは時間がかかります。その時に使えるものが「型」です。いくつかの基本型がありますので、紹介していきます。

 ここでレーンの考え方を少しずつ入れていきますが、なんとなくイメージを付けてもらえればと思います。ディフェンスはそれぞれのレーンに1人ずつ人員を配置して、攻めるコースをなくしていければ理想ではあります。しかしながら、やはり1人1つのレーンは大変なので、どちらかのサイドにもっていかせようと試みたり(ハメ/トラップゾーン)、真ん中で手数をかけさせようと試みたり(フォースミドル)して、守るレーンを縮小・限定していきます。

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この子たち楽しそうですね、早くアルティメットしたいですね。

 では、ここからゾーンの型を具体的に紹介していきます。

 ちなみに縦の線をレーンと言っていますが、この記事では横の線を「ライン」と呼称します。

①Vの型

 わかりやすくするように字のまま名前を付けています。3人で作るゾーンの型です。ゾーンのパスコースは、ディフェンスが平行であるほど選択肢が増えます。なぜなら、一度合間を抜かれたり、上のパスを通されると、そこから抜かれた平行線にある全員がディフェンス参加できない状態に陥るからです。オフェンスは、ディフェンスを平行の形にするようにハンドリングしていくと良いとも言えます。また、平行であるがゆえに、広い展開からの45度を止められなくなります。この場合も、先ほどと同様に全員が置き去りになります。

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 まずはディフェンスの基本は3人です。3人をV字にすることで、落差を生み、合間の空間を狭めることができ、且つ相手のゲインに対応しやすくなります。

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 一つ目の図は、いわゆるカップです。これは次回の記事「ポジション解説とゾーンDの構築」で話をしますが、前に出させないように位置取り、仮に赤②に出ても青②が45度を切れる位置にポジショニングしています。オレンジの矢印で示したものはDFのプレスのかける方向例です。それぞれのポジションが一人ずつコースを切るようにプレスをかけていきます。

 これは実際には青②と同じラインにもう2人いる、ゾーンによくあるパターンです。ハンドへのプレスは弱めですが、その後のミドルへのパスをふさぐ形になります。

 

 2つ目は少しプレッシャーをかける型です。実際には青②と同じラインにもう2人いるので、前が3人になり、ハンドへのプレスをかける人数が多いゾーンになります。ハンドが3人いるそれぞれのレーンにプレスをかけられるので、展開へのプレッシャーをかけやすくなり、割かし前目のディフェンスにすることができます。

 

②Wの型

 これは5人で行うものです。言ってしまえば先ほどのVの型を5人に広げた型になります。2-3-2や3-2-2の前5人が行い、V字と同様に、守れる空間を広くする狙いがあります。これまでに話してきたレーンを狭めるために、まずは相手の出しどころを限定的にさせ、ゲインを出しづらくすることが重要です。

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 1枚目は先ほどのVの延長です。5人がWの型に位置取ります。このゾーンはハンドへかける人数が少ないので、ハメ側にもっていかないと消耗するだけです。ですので、全体として横の展開はOKにして、縦に出ないことを最優先、そしてハマったら人数をかけてプレスをかける、といった具合になります。

  2枚目も同じく先ほどの延長です。ハンドに3人かけているので、やや前目のプレスをかける型になります。逆Wです。これは初めからハンドへのプレスをかける戦法ですが、ハンドが上手いと前3人の距離感を縮められてしまい、広い展開からのゲインのパスが出やすくなるリスクがあります。また、ミドルにかける人数が1人少ないので、一本パスが抜けると瓦解しやすいです。

 ゾーンは「ゾーンプレス」と言われます。プレスの方向や意識統一がカギになるものなので、それぞれの考えるプレス方向が違うと途端に守れる場所がばらばらになります。基本は「レーンの縮小・限定」ということをキーワードに考えていけると◎です。

③Zの型

これはハメ側に行ったときに考える型です。4人でプレスをかけるようなハメて落とすゾーンでの動きになります(図1)。ちなみに図ではNになってしまいました。赤③のオフェンスから見たらZです笑。

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 先ほどWの型1枚目のものが、ハメ側に移行した形に似ていることがわかるでしょうか。2-3と呼ばれるものは、しっかり持っていければZの型に移行しやすいWの型になります。Wの左端をとってZの型です。いなくなった人は、実際には黄色の〇のところくらいにいます。

 黄色の人のポジショニングは、正直意見が別れます。しかしながら、仮に展開された時に青の①②とVを作れないような暴走は控えるべきです。

 

 

 以上の3つがディフェンスの型となります。これをほかのメンバーと構築しつつ、常に全員がV・W・Zの型を作っていると、ゾーンのエリアは守りやすくなります。加えて言えば、ほかのポジションのカバーに入る際にも、この型を基本に持っていれば、どこが穴なのかは明確になります。あとは実践の動画を見ていくときに、その型が取れているのか?を念頭にミーティングしていくと、各々の考えを共有できると思います。

 数学とは違い、スポーツの戦術というテーマにただ一つの正解はありません。ですが、「TOを起こす」という解に向かっての解法はたくさんあります。それを自分たちの色にしてみてはどうでしょうか。

 次回予告

 「アルティメットに共通言語はあるのか?!ゾーンのポジション解説とDの構築」

 ありがとうございました。

 Darwin #2